星より確かな僕の予言
「信じるわけないじゃん、あんなの」
「おい、雅紀!見ろよ、お前今月の運勢1位だってよ!」
授業の合間の休み時間。
次の授業の準備をしていると、近くで集まって話していたクラスメイトの一人が、雑誌を手に振り返って話しかけてきた。
「なんだよ、急に。運勢って雑誌に載ってる星占いかなんか?」
正直言ってあまり気乗りしない話題ではあったが、邪険にするわけにも行かず、人懐っこい笑みを浮かべて立ち上がり、さりげなく輪に加わる。
「そうそう!俺の彼女がこういうの好きでさー。
すっげー当たる占い師だって言うから付き合いで読んでみたんだけど、これが結構当たってんだよなー。」
覗き込んだそいつの手元には、女子が好きそうな占い雑誌が開かれていた。
目に痛いほどの原色あふれる派手なページの見出しには、「聖なる夜はアナタ次第!! リリー先生のクリスマス☆ハッピー星座占い」という文字。
思わず顔をしかめながら、喉まで出かかった「うわ〜・・・」といううめき声を悟られぬよう、ぐっと押し込める。
幸い雑誌に夢中になっているクラスメイトには、本音が出てしまったその表情を見られなくてすんだ。
(聖なる夜・・・ねえ)
馬鹿にしたように片頬だけで僅かに笑う。
リリー先生とやらの怪しげな占い師に、心の中で舌を出しながら小さく鼻を鳴らした。
「へえ〜、意外!お前そういうの信じるんだ?」
気を取り直して、「お前は今月金運最高だってよ!」などと次々に占い結果を読み上げる楽しげな友人を、からかうように声をかけて肩を組む。
「いや、俺も最初は信じてなかったんだけどさ、コレがあながち外れてないんだよ!
こないだなんかデートの場所に水辺を選ぶなって言われてたのに、すっかり忘れててさー。
彼女とお台場行って大喧嘩!やっぱ占い馬鹿にしちゃだめだったんだって!」
興奮気味にいかにその時の喧嘩が大変だったかを語っている彼に、「いや、それって占いのせいじゃないだろ?」という冷静な突っ込みは、今は言わないでおく。
占いを守らなかった為の大喧嘩であったと二人が納得しているのであれば、敢えて第三者が水を差すこともあるまい。
適当に相槌を打っていると、程なくして始業を告げるチャイムが鳴る。
その音でどうやら本題を思い出したらしい彼は、バタバタと席に戻り始める友人達の中から華原の腕を掴んで呼び止める。
「ちょっとまった、雅紀!これ!占い結果お前に見せようとしてたんだよ!」
「えっいや、俺いいって・・・」
はっきりいって全く興味ないから、とは言えず口ごもると、遠慮すんなって!とウインクまでされて、友人は意気揚々と席へ戻っていく。
半ば無理やり押し付けられた雑誌にため息を一つ吐きながら、仕方なくそのまま席に着く。
どうせ授業が終われば、書かれた内容について「どうだった?!」なんて聞いてくるのだろう。
めんどくさそうに眉をひそめて、教師の目を盗んで諦めたようにぱらりをページをめくった。
「ね、華原くん。さっき、占いの話してた?」
昼休み。
校舎裏でいつものようにヒトミと二人、彼女お手製の弁当を食べていると、ふいに彼女がそんなことを尋ねてきた。
「ああ、聞こえてたんだ。」
「うんっ。ね、どうだった?なんて書いてあった?」
リリー先生の占いって当たるんだよね〜と、目を輝かせながら興味心身で聞いてくる彼女に、もうほとんど覚えていない占いの内容をぼんやりと思い出す。
占いの結果を伝えようと口を開きかけて、やめる。
「華原くん?どうかした?」
急に押し黙ってしまったその様子に、ヒトミは不思議そうに首をかしげる。
つまらなそうに目を伏せて盛大なため息をついた華原は、ごろんと草むらに横になって空に向かって告げる。
「信じるわけないじゃん、あんなの」
急に機嫌の悪くなってしまった華原に戸惑っていたヒトミは、あることに思い当たってぽんと手をたたく。
「あっ!もしかして運勢悪かったとか?」
「1位だったよ」
あっさりと自分の予想と真逆の返答をされて、ズルッと肩を落とす。
「じゃ・・・じゃあなんで?」
なんでそんなに機嫌悪いの?
そう問いたげな顔で覆いかぶさるように上から覗き込まれる。
(なんでって、そりゃはヒトミの運勢の欄に、
「魅力的な複数の異性から素敵なお誘いがあるかも♪」とか書かれてたから・・・なんて言えるわけないだろ)
嫉妬している心の中を見透かされそうで、「さーね」なんていいながら視線から逃げるようにごろりと横を向く。
それでもなお、気になるから教えて!と肩をゆすってくる恋人に眉間にしわを寄せながら、心の中で(お前のせいだよ!!!)と叫ぶ。
どうやって占いから話を逸らそうかと思案していると、思いがけずいい案が浮かんだ。
「俺の占いじゃなくて、ヒトミの占いの結果なら教えてあげるよ」
「えっなに!?知りたい知りたい!!」
予想通り。
先程までよりも尚一層、興奮気味に身を乗り出してくる。
にやりと笑いながら覗き込んでくる恋人を見上げる。
やはり自分の運勢が気になるのは、ヒトミも例外ではないらしい。
胸の前で手を組んでワクワクしながら訪ねてくる恋人に、ふいに半身を起こして唇に触れるだけのキスをする。
「恋人のことだけを考えていい子にしてれば、クリスマスには俺から素敵なプレゼントがもらえるってさ」